キリストの福音上陸の地・鹿児島

《2024年 年間目標》洗礼の恵みに気づき、それを生きよう(5)

投稿日:2024年5月1日 更新日:

中野裕明鹿児島司教

鹿児島教区司教 中野裕明

教区の皆さま、お元気でしょうか。

今回は聖霊と洗礼の関係についてお話しします。

私たちは、5月19日に聖霊降臨の祭日を祝います。復活節はこの日をもって終わります。

実は、主の復活から聖霊降臨までの50日間は受洗者にとって、とても大切な期間であります。それは典礼神学上、ミスタゴジアと命名されている期間だからです。すなわち「新しく神の子とされた新信者が、その身分がどのような意味を持つのかを体得する期間である」ということです。

平たく言うならば、ある人が養子縁組で、新しい家族の一員になったようなものです。その人は、これまでとは異なる価値観を持つ新しい世界を経験することになります。

ここで大事なことは、新信者さんは、これから神の家族のメンバー、すなわち、「父である神」、「子である神」、「聖霊である神」について、また勿論「聖母マリア」についても深く知ることになります。しかし、これらは生涯にわたって知ることになるので、受験勉強のようなやり方で学ぶのではありません。毎週、主日のミサに参加することによって自然に体得するのです。

話を聖霊降臨までの50日間に戻します。復活節に朗読される福音に注目してください。

復活節第2主日では、復活したイエスが復活の第一の実りである罪の赦しのための聖霊を弟子たちに送ります。

第3主日では、聖書が示しているイエスとミサの中で出会えるイエスについて学びます。

第4主日では、羊のために命を捨てる善き牧者であるイエスの姿が語られます。

そして第5主日には、ぶどうの幹とその枝の密接な繋がりがそのままイエスと私たちの繋がりであることを学びます。

つまり、復活節に読まれる福音書は、新信者が神の家族のメンバーの一員として、イエスをよく知り、愛せるようにと勧告しているのです。

神の家族についてもう少し深堀りします。

イエスは次のように言います。

「私を愛する人は、私の言葉を守る。私の父はその人を愛され、父と私はその人の所へ行き、一緒に住む」(ヨハネ14・23)。

この言葉はとても不思議に思われます。

地上の生活の時、イエスと弟子たちの関係は、師弟関係でした。ガリラヤ生まれで漁師だった弟子たちは、イエスの魅力に引かれて、イエスの弟子になりました。ところが、その師弟関係が一変したのは、イエスの復活後です。

先のイエスのことばは、生前弟子たちに向けられたものですが、その前に、次のような不思議なことを話しています。

「あなたがたが私を愛しているならば、私の戒めを守るはずである。私は父にお願いしよう。父はもうひとりの弁護者を遣わして、永遠にあなたがたと一緒にいるようにしてくださる。この方は、真理の霊である。世はこの霊を見ようとも知ろうともしないのでそれを受けることができない。しかし、あなたがたは、この霊を知っている。この霊があなたがたのもとにおり、これからも、あなたがたのうちにいるからである」(同上15~17節)。

日本人の間では、守護霊の存在が取りざたされています。写真上の人物の背後にかすかに浮かび上がっている影を指しているようです。

しかし、イエスが言うところの霊は、ご自分の「弁護者」であり、「真理の霊」であるなど、その性格を明確にしています。

さらにイエスは続けます。

「私はあなたがたのもとにいる間、これらのことを話した。しかし、弁護者すなわち、父が私の名によってお遣わしになる聖霊が、あなたがたにすべてのことを教え、私が話したことをことごとく思い起こさせてくださる」(同上25~26節)。

つまり、イエスの弁護者、真理の霊とは、聖霊の事だったのです。

今回のお話は、聖霊と洗礼の関係についてでした。

ところで、5月は聖母月です。私たちと同じ人間であられるマリアは、聖霊によって神の子イエスを宿されました。そして、同じ聖霊降臨の時、マリアは弟子たちと共にいました。

教会の誕生日である聖霊降臨の日、新信者は、父である神、子である神、神の母である聖母を頂く家族の一員であることを喜んで自覚するのであります。

 

鹿児島カトリック教区報2024年5月号から転載

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