司教の手紙

聖年に寄せて(4)主イエスの復活節を生きる

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中野裕明鹿児島司教

中野裕明 鹿児島司教

教区の皆さま、お元気でしょうか。今回は7週間続く復活節の意義についてお話しします。約6週間の四旬節の後、復活節は聖霊降臨まで続きます。典礼暦のこの期間のポイントは何でしょうか。

7週間続く復活節の意義

典礼秘跡省は次のように教えています。

「受洗者は復活節の教話を聞き、特に秘跡を受けた体験を通して、信仰の神秘をさらに深く悟る。霊的に満たされたこの人々は、神のことばのすばらしさを味わい、聖霊の交わりに入り、主のめぐみ深いことを体験する。この体験は、キリスト信者独特のもので、日々の信仰生活を通して増大し、信仰と教会と世界について新しい感覚を与える。」

ここでの受洗者とは、復活の主日に洗礼を受けた新しい信者のことですが、古い方々も復活徹夜祭のミサの中で洗礼の更新をしましたので、言われていることは該当します。

上記の教えを解説します。

「秘跡を受けた体験を通して、信仰の神秘をさらに深く悟る」についてです。つまり、「秘跡」と「信仰の神秘」の関係です。

まず秘跡とは、洗礼の場合、司祭の「私は父と、子と、聖霊のみ名によって、あなたに洗礼を授けます」という定句を唱えながら、その人の額に水を注ぐ行為を指します。この定句と水を注ぐ行為は洗礼が有効であるための絶対条件です。この儀式によって、その人は洗礼の恵みを受けます。ここでいう恵みは、洗礼の効果のことですが、何かの物質的なご利益ではなく、「信仰の神秘」をさらに深く悟る、ということになります。では、この「信仰の神秘」とは何でしょうか。その答えを端的に言い表すなら、ミサ中の聖変化の後、司祭が「信仰の神秘」と唱えた後の会衆の応答にあります。すなわち、「主よ、あなたの死を告げ知らせ、復活をほめたたえます。再び来られるときまで」です。

だんだん難しい話になってきましたが、聖パウロの説明を聞きましょう。

「あなたがたは知らないのですか。キリスト・イエスに結ばれるために洗礼を受けたわたしたちが皆、またその死にあずかるために洗礼を受けたことを。わたしたちは洗礼によってキリストと共に葬られ、その死にあずかるものとなりました。それは、キリストが御父の栄光によって死者の中から復活させられたように、わたしたちも新しい命に生きるためなのです。」(ローマの信徒への手紙6・3〜4)

わたしたちはこの時、実際に死ぬわけではなく、古い自分、つまり原罪と自罪に拘束された自分に死ぬのです。

ところで、秘跡というのは、儀式のなかでのキリストとの出会いであると言えますが、信仰の神秘は、日常生活の中でのキリストとの出会いであると言えます。

例えば、闘病生活を余儀なくされている信者さんや、特に死の危険にある方などは、まさにキリストと合体している感覚があるのではないでしょうか。それは祈りの中で、さらにはご聖体拝領の中で、強く実感できるはずです。「さらに深く悟る」はこのような体験を指していると思います。

さらに、典礼秘跡省の教えを紹介します。

「秘跡にあずかる生活を通して聖書の理解が深まるとともに、人間理解と共同体の体験も豊かになる。この期間、受洗者は代父母に助けられて他の信者と親しくなり、すでに洗礼を受けた信者も、新しい視野と新しい刺激を与えられる。このため、入信直後の導きは教会全体にとってきわめて重要な時である。」(『カトリック儀式書 成人のキリスト教入信式』39番、40番)

教会全体が、主の復活の恵みで満たされますように。

鹿児島カトリック教区報2025年5月号から転載

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