キリストの福音上陸の地・鹿児島

司教の手紙 ㊴ 「イエスの聖心の月」に寄せて

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教区の皆さまお元気でしょうか。

カトリック教会では伝統的に6月を「聖心の月」と称して、イエスの聖心の信心を奨励しています。具体的には、各教会で捧げられている「初金ミサ」がその例です。皆さんは何気なく、毎月の第1金曜日に捧げられる「初金ミサ」に与かっておられると思いますが、それは「イエスの聖心の信心」を広めるために設けられたミサなのです。今回はそのことについてお話します。

6月は信仰の核心となる祭日が目白押し

典礼暦によると6月はキリスト教の信仰の核心となる祭日が目白押しです。今年を例に取りますと、「聖霊降臨」(5日)、「三位一体」(12日)、「キリストの聖体」(19日)、「洗礼者聖ヨハネの誕生」(23日)、「イエスのみ心」(24日)、「聖ペトロ・聖パウロ」(29日)、となります。ある司祭の表現では、「スーパーのバーゲンセールのようだ」そうです。

教会は7週間の復活節という、典礼用語の「季節」を終えて、「年間」という通常の典礼に移りますが、その冒頭に教会が死守すべき信仰の核心を明確にして、それを祝います。本来は各祭日についてお話すべきですが、今回は「イエスのみ心」に限ってお話します。

「み心の信心」は生活での神の愛の実践

つまり「み心の信心」とはイエスが示された神の愛を私たちが生活の中で実践していくということです。それは、イエスは元来神ですが、人間となられたことによって、私たちにでもできる方法で、神の愛を実践できるというわけです。具体的にはイエスが受けられた受難と死は、私たち人間にも共有できるものです。

この信心の起源はマルグリット・マリー・アラコック修道女にあります。1675年、彼女はイエスの私的啓示を受けます。それは、イエスの胸には心臓が見えるようになり、その開いた傷からは愛を象徴する炎が出、イエスを傷つける人々の罪を象徴する茨の冠が心臓に絡みついていた、というものです。その時、イエスの次の言葉を聞いたそうです。

「この心を見なさい。これは、人間を非常に愛し、人々にその愛を示すために涸れ果てるまで何一つ惜しまなかったものなのに、多くの人々から、その報いに、特に聖体の秘跡において、忘恩、不敬、さらには冒涜、冷淡、無関心しか受けていない。最も辛いのは、私に献身した人々もそうした態度をとっていることである。従って、私の望みは、聖体の祭日の翌週の金曜日に、私が聖体において受けたすべての侮辱を償うための祝日を設け、その日には償いの心をもって聖体を拝領することである」と。

確かに、人間の心臓は体内に隠されているので人の目には触れません。勿論、神の愛も五感に触れる形で顕現化するものでもありません。しかし、見えない神の愛を見える形で表した像が先の啓示だったと言えます。まことの神であり、まことの人間であるイエスは、ご自分の愛を私たちに示すために、人間的方法を取られたと理解することができます。つまり、精神と感情の行為を含む人間的な愛を示されたのです。

第2バチカン公会議は、その現代世界憲章の中のキリストを新しい人と定義した項目の中で、「神の子は受肉によって、ある意味で自分をすべての人間と一致させた。彼は人間の手で働き、人間の知性でもって考え、人間の意志に従って行動し、人間の心をもって愛した。」(22番)と述べています。

最後の「人間の心をもって愛した」がみ心の信心の意味を継承していると言えます。

他者を愛する力が与えられますように

現代は、ほぼ人間中心主義の世界であると言っても過言ではありません。人道、人権という言葉が多用され、弱い立場に置かれている人たちへの同情は、21世紀に入って顕著のように思えます。それはグローバル化した世界の中で、富裕層と貧困層、勝者と敗者の二層の構図が明確化している実態に起因しているように思います。

このような状況下では、教皇フランシスコも強調しているように、弱い立場に置かれている人々へ同情が注がれることは当然の成り行きではあります。み心の信心は、そのような人間的愛を促進するものであります。しかし、この信心の始まりは、あくまで十字架上で血を流された、あのイエスの心(愛)を観想することであります。そして、その根本には、聖木曜日のご聖体の制定、つまりミサ(感謝の祭儀)があるということを忘れてはならないと思います。

「永遠のいのちの糧であるパン」と「多くの人の罪のゆるしのために流される血」を受けて、イエスの愛を生き、他者を愛する力が与えられるよう祈りましょう。

鹿児島カトリック教区報2022年6月号から転載

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6月は「イエスの聖心の月」です。イエスの心臓が茨の冠で拘束されながらも愛の炎を燃え上がらせているご絵を思い浮かべてください。このような熱い愛を、洗礼の恵みを私たちは受けているのです。