司教の手紙

司教の手紙 ㉔「世界病者の日」に寄せて

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皆さまお元気でしょうか?
今回は2月11日「ルルドの聖母」の記念日に指定されている「世界病者の日」についてお話ししたいと思います。

「世界病者の日」制定の趣旨

この日は聖パウロ・ヨハネ二世教皇によって制定されたもので、今年で29回目になります。その趣旨は次のようなものです。

「病者がふさわしい援助を受けられるように、また苦しんでいる人が、自らの苦しみの意味を受けていくための必要な助けを得られるように、カトリック医療関係者に対してだけではなく、広く一般社会に訴えていかなければなりません。医療使徒職の設立、ボランティア活動の支援、医療関係者の倫理的霊的養成、病者や苦しんでいる人への宗教的な助けなども重要な課題です。」(「カトリック教会情報ハンドブック2021」67頁参照)

ルルドには治癒祈願だけで行くのではない

ご承知のように、ルルドと病者とは深いつながりがあります。村の少女・ベルナデッタに現れた聖母が彼女に指示した所から湧き出た泉の水によって傷病者が癒されるという奇跡が起きた場所です。この事実が教会によって認証されるには時間がかかりましたが、現在のように医療技術が進んでいない当時は、奇跡を信じる宗教か、それとも合理性を優先する科学かで、激しい論争がまき起こりました。1860年代のことです。現代では宗教と科学の対立は克服されたように思いますが、しかし、病人を「診る」あるいは「看る」という温かい医療ではなく、高度な医療器具を使って病気は診るけど人は診ない、と言われても仕方ない状況があるように思います。病気になったら、患者(患うもの)とされ、疎外感を味わうのではないでしょうか。

ルルドに巡礼に行かれたことがある人はお分かりでしょうが、そこは、病人さんと介添えの方が同数あるいは介添えの方がその倍以集まるところです。勿論、医療設備も整っています。そこでは病気からの癒し、いわゆる、正式に奇跡と認定された人はこれまで69人だそうです。しかし、年間600万人と言われる巡礼者は、単に病気の治癒祈願のためだけに行くのではありません。神様の憐みに触れるために行くのです。

私が個人的に出会ったご婦人は、そのとき3回目だと仰っていました。1回目は、ガンで、余命半年といわれたとき、2回目はルルドから帰ってから診察したらガンが進行していないと告げられてから感謝のため、今回は、調子がいいので、ルルドで開かれていた「世界聖体大会」に参加するためでした。私はこのご婦人の黒ずんだ顔色が気になったのでそっと尋ねてみたところ、先のようなお話でした。決して吹聴するでもなく、かといって隠すのでもなく、淡々と静かにお話しくださいました。

神に信頼する強い信仰を 互いに祈り合おう

ルルドは、神様に信頼を寄せる人たちの集合場所です。介添えを申し込む若者もたくさんいます。境内は、沈黙が求められていて、祈りの雰囲気が漂っています。病気を患い、手の施しようがないほど病状が進んでいる人が大勢おられることと思います。しかし、介護する人たちや、医療従事者も皆、唯一の父なる神に信頼し、心を一つにして祈っていると感じます。レストランの給仕の方からロザリオを10本ほどいただきました、理由は、ガンの末期で苦しんでいるお母さんのために祈ってほしいとのことでした。10本くれたのは、他に9人にあげて、祈ってもらうためでした。

新型コロナ禍で、私たちは自分がいつ感染するか、あるいは、いつ他人に感染させるかという恐怖心に煽られています。目に見えないウイルスの存在を信じているからです。それなら、目に見えない神様に信頼する強い信仰が得られように祈り合おうではありませんか。

鹿児島カトリック教区報2021年2月号から

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