司教の手紙

司教の手紙 ㊻ 教区の日に寄せて~福音宣教する教会作り~

投稿日:2023年1月30日 更新日:

普遍教会>部分教会=教区

教区の皆さまお元気でしょうか。
今回は2月25日(土)に記念する「教区の日」に寄せてお話します。「教区」という語は、教会法上の用語ですが、神学的には「部分教会」と称されます。それは全世界の教会を言い表す「普遍教会」に対応する表現だと言えます。因みに「普遍教会」の普遍は、カトリックの邦訳です。

ところで部分教会を統治するのが司教です。従ってローマ教区の司教はローマ教皇です。さらに教皇はイエスから第1の使徒に任命された聖ペトロの後継者であります。つまり、12使徒の後継者で部分教会を統治するのが司教団であり、その首位が、ローマの司教である教皇であるというわけです。カトリック信者は全世界に約13億6千万人(2020年の統計)います。この中国の人口にも等しいカトリック信者で構成されている教会そのものの存在理由は何でしょうか。

福音書では、イエスが弟子たちを派遣する場面が記されています。

「全世界へ行って、すべての造られたものに福音を宣べ伝えなさい」(マルコ16・15)

このメッセージは他の全福音書記者によって収録されています。しかし、メッセージの内容、あるいは力点がそれぞれ異なっているのに気が付きます。

派遣についての四福音書の記述

4つを比較してみましょう。

マタイ:「わたしは、天と地の一切の権能を授かっている。だから、あなたがたは行って、すべての民をわたしの弟子にしなさい。彼らに父と子と聖霊の名によって洗礼を授け、あなたがたに命じたことをすべて守るように教えなさい。わたしは世の終わりまで、いつもあなたがたとともにいる。」(マタイ28・18~20)

マルコ「全世界に行って、すべての造られたものに福音を宣べ伝えなさい。信じて洗礼を受ける者は救われるが、信じない者は滅びの宣告を受ける。信じる者には次のようなしるしが伴う。彼らは私の名によって悪霊を追い出し、新しい言葉を語る。手で蛇をつかみ、また、毒を飲んでも決して害を受けず、病人に手を置けば治る。」(マルコ16・15~18)

ルカ:「イエスは言われた。『わたしについて、モーセの律法と預言者の書と詩編に書いてある事柄は、必ずすべて実現する。これこそ、まだ、あなたがたと一緒にいたころ、言っておいたことである。』そしてイエスは、聖書を悟らせるために彼らの心の目を開いて、言われた。次のように書いてある。【メシアは苦しみを受け、三日目に死者の中から復活する。また、罪の赦しを得させる悔い改めが、その名によってあらゆる国から、人々に宣べ伝えられる】と。エルサレムから始めて、あなたがたはこれらのことの証人となる。わたしは、父が約束されたものをあなたがたに送る。高い所からの力に覆われるまでは、都にとどまっていなさい。」(ルカ24・44~49)

ヨハネ:「弟子たちは主を見て喜んだ。イエスは重ねて言われた。『あなたがたに平和があるように。父がわたしをお遣わしになったように、わたしもあなたがたを遣わす。』そう言ってから、彼らに息を吹きかけて言われた。『聖霊を受けなさい。だれの罪でも、あなたがたが赦せば、その罪は赦される。だれの罪でも、あなたがたが赦さなければ、赦されないまま残る。』」(ヨハネ20・20~23)

4人の福音書記者の文章を注視して読んでいくと、それらの強調点が分かります。まず基本的に言えることは、イエスの誕生の次第はマタイとルカだけに記されているのに対して、この弟子たちの派遣については4人とも記していること。

教会の使命は「福音宣教」の一点に

次に洗礼を授けるように指示されているのは、マタイとマルコで、罪の赦しを宣言するように指示されているのが、ルカとヨハネになります。

さらに「福音」を宣言するように指示されているのはマルコだけですが、マタイでは、「天と地の一切の権能」とか、「わたしは世の終わりまでいつもあなたがたとともにいる」とあり、マルコでは、「悪霊を追い出すこと」や「病気の治癒」などが語られています。ルカでは、「メシアの復活や聖霊の約束」などが語られ、ヨハネでは、「主からの平安」と、「聖霊の授与、罪の赦し」などか語られています。

私たちは現在、マスコミやインターネットからの情報で埋め尽くされています。この世は闇に覆われているので、明るいニュースに乏しいのが現実です。しかも人間は妬み深いので、他人の成功よりも失敗の方を大いにはやし立てます。そんな中、罪と死に打ち勝ち、復活したキリストを賛美し顕彰する教会の使命はまさにこの一点にあると言えるのではないでしょうか。

鹿児島カトリック教区報2023年2月号から転載

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