教区シノドス関連

教区シノドス これからどう進む---④

投稿日:2021年1月4日 更新日:

教区シノドス推進会事務局・長野宏樹

全員参加の共同体を目指して

3 小教区評議会中心の教会

前回は、「活動団体中心の教会」という小教区のタイプを提示しましたが、今回は「小教区評議会中心の教会」の姿をながめてみることにします。

小教区評議会中心の教会

小教区評議会中心の教会

(1)小教区評議会の登場

上の絵は、小教区評議会が中心的な働きをしている小教区の姿を表しています。これまでの2つの絵と比較して大きく変わったところは、どこでしょうか。

まず第1に、主任司祭が聖堂の中心にはおらず、左側の信徒のグループと一緒に座っています。このグループは、小教区評議会を表しています。この小教区評議会では、主任司祭が中心になりながら、小教区のさまざまな問題について話し合っています。

つぎに、これまでの絵では聖堂の中心に立っている司祭の方に向かっていた点線が、こちらでは小教区評議会の方に向かっています。これまでの主任司祭主導の小教区運営から、小教区評議会中心の運営へと変わったのです。この小教区評議会の場で、主任司祭は、評議員たちの意見に耳を傾けながら、小教区内のさまざまなことがらに関する、
より充実した決断を下せるようになったのです。

(2)第二バチカン公会議と小教区評議会

第二バチカン公議以来この55年の間に、小教区評議会またはそれに近い形の組織が多くの小教区に導入されてきました。それは、第二バチカン公議の精神の基本に流れている、信徒各自にキリストからゆだねられている使命を再確認・自覚できるようになった成果でもあります。

第二バチカン公会議では16の公文書が出されましたが、そのほとんどで、信徒の役割というものが強調されました。そしてさらに、「信徒使徒職に関する教令」26項では、教会の使徒的活動を助けるための、教区および小教区における「評(協)議会設置の必要性」も強調されています。

公会議が終了してから20年近くたった1983年には、その精神に基づいた新教会法が発行されましたが、その中(第536条)ではさらに、司教が必要と判断した教区における小教区司牧評議会の設置が義務づけられたのです。

この新教会法が出されてからは、世界中の多くの教区で、教区司牧評議会や小教区司牧評議会設置の動きが進められていくことになります。

(3)鹿児島司教区の動き

この鹿児島司教区では、昭和44年(1969年)里脇司教の時に教区評議会が発足し、昭和57年(1982年)糸永司教の時には小教区評議会の教区全域での設置が決められ「主任司祭を中心とし行う小教区司牧に信徒が意見と実施協力をもって積極的に参加するためのものである」と狙いが明記されています。(司祭向け「司牧ノート」19号参照)

教区評議会が1983年の新教会法発布より14年も先行したのは実に画期的な出来事であったといえるでしょう。

(4)小教区評議会の役割

初期の段階では、小教区評議会のメンバーは、自分たちを司祭の「お手伝い」をする単なる協力者だと考える傾向が強かったように思えます。それは、小教区評議会のメンバーたちが、主任司祭に声をかけられた人だったり、その人のことをよく知らない数名の役員たちによって選ばれた人だったり、あるいは選挙で選ばれたので仕方なしに任務を引き受けた人だったりしたことに、原因があるのかもしれません。

現在では、多くの小教区評議会が活発な活動を展開しているように思えます。小教区活動に必要なことは、ほとんどすべてを取り扱っているところもあるようです。従来は司祭の役目とみなされていたことがらでも、信徒にできることであれば、互いに分担し合っています。信徒が要理のクラスを担当したり、典礼の準備をしたりミサの中の種々
の役割を分担し合ったり、社会的な奉仕活動に励んだりしています。

ところで、新教会法では「小教区司牧評議会」という言葉が使われていますが、この名称は、その役割が何であるかをはっきりと明示しているように思います。「司牧」とは、牧者であるキリストとその羊たちとの関係を表す言葉です。そのキリストが、「私の羊の世話をしなさい」(ヨハネ12・16)という言葉を使って、ペトロを中心とする使徒たちに、羊である私たちの世話を託されました。そして、使徒たちの後継者である各教区の司教様方は、その任務を各主任司祭方にも託しておられます。そこで新教会法では、主任司祭に託されているこの司牧の任務を可能な範囲で小教区司牧評議会にも担ってほしい、という意図を込めて、「司牧」という言葉が使われているわけです。

(5)次のステップは?

このように、小教区評議会発足からこれまでの38年間には大きな変化がありました。しかし、これまで提示してきた3つのタイプの教会(「主任司祭中心の教会」「活動団体中心の教会」「小教区評議会中心の教会」)の絵を見くらべてみると、小教区それ自体はそれほど変化していないことにも気がつきます。

どのタイプの小教区でも、信徒たちは、一人か二人で、あるいは家族単位でミサに参加していますし、活動団体もそれなりに活躍しています。具体的に変わった点は、主任司祭が小教区評議会の中で信徒と一緒に話し合っていることだけです。しかし根本的には、「主任司祭中心の教会」の姿はそのまま残っています。つまり、一般の信徒たちにとっては、評議会のメンバーは聖職者と同じように自分たちとはほど遠い存在の人たちであり、その人たちに従っておりさえすればよい、という依存体質からはまだ抜け出せないでいるのです。

「小教区評議会中心の教会」になったということは、それまでの教会の歩みからすれば大変革であったことだけは事実ですが、この評議会も、大多数の信徒に大きな影響力が及ぶところまでにはまだ成長していないように思えます。小教区はいま、さらに新たな段階に進む時期を迎えているのではないでしょうか。

次回は、第四のタイプの教会像として、「自覚する教会」について考えていきたいと思います。

鹿児島カトリック教区報2021年1月号から転載

【図解】小教区評議会中心の教会

この記事を読んだ信徒の方から「小教区評議会中心の教会」図解の提供を受けましたので、皆さんの便宜に供したく掲載いたします。個々人はもちろん、小教区やグループなどでの分かち合いにご活用ください。

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