司教の手紙

聖年に寄せて(6)聖母被昇天祭と恒久平和

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中野裕明鹿児島司教

中野裕明 鹿児島司教

教区の皆さま、お元気でしょうか。
毎年、8月15日は聖フランスコ・ザビエルによるキリスト教伝来祭、終戦記念日(日本司教団主催:平和旬間最終日)、聖母被昇天祭の3つの意向が重なります。

それで今回は、聖母被昇天祭と戦後80年の節目に当たる恒久平和祈念日についてお話しします。

1950年11月1日、教皇ピオ12世は「無原罪の神の母、終生処女であるマリアがその地上の生活を終わった後、肉身と霊魂とともに天の栄光に上げられたことは、神によって啓示された真理であると宣言し、布告し、定義する。」(『カトリック教会文書資料集』3903番参照)

この布告の内容は何世紀も前から信者の間で信じられていた伝承ですが、教皇ピオ12世は第2次世界大戦終結後5年を経て、信ずべき教義として公布しました。それは悲惨な戦争を2度と繰り返さない恒久平和への悲願として公布されたものです。

しかし、戦後80年を経た現在、世界情勢は不安定さを増しています。そんな中、今一度、キリスト者として、「平和を実現する人々」(マタイ5・9)にどうしたらなれるか考えてみます。

聖パウロの言葉を聞きましょう。

「わたしたちは信仰によって義とされたのだから、わたしたちの主イエス・キリストによって神との間に平和を得ており、このキリストのお陰で、今の恵みに信仰によって導き入れられ、神の栄光にあずかる希望を誇りにしています。そればかりでなく、苦難をも誇りとします。わたしたちは知っているのです、苦難は忍耐を、忍耐は練達を、練達は希望を生むことを。希望はわたしたちを欺くことがありません。わたしたちに与えられた聖霊によって、神の愛がわたしたちの心に注がれているからです。」(ロ―マ書5・1〜5)

この文章は2つの点で私たちの気を引きます。

一つ目は、この文章の内容は聖母マリアの人生を思い出させる、ということです。

マリアの生涯は信仰によって神のみ旨を受け入れ、忍耐をもってこの世を生き抜き、神の栄光に希望を託した生涯でした。わたしたちも彼女に倣いたいのです。

二つ目は、「希望は私たちを欺かない」という文言です。

これは「2025年通常聖年」のタイトルです。今年の復活祭の翌日に帰天された教皇フランシスコの選んだ言葉です。

マリアさまの精神と通じ、彼女を深く崇敬していた教皇フランシスコは、自らの希望で、聖母マリアに捧げられた「サンタ・マリア・マッジョーレ大聖堂」に葬られています。

最後に、一般によく言われる「恒久平和」という言葉について聖アウグスチヌスの言葉を紹介したいと思います。 彼は言っています。

「2種の愛が二つの国をつくったのである。すなわち、この世の国をつくったのは神を侮るまでになった自己愛であり、天の国をつくったのは自己を侮るまでなった神の愛である。」(服部栄次郎訳『アウグスチヌス 神の国(三)』第14巻 第28章)

おそらく、この世では恒久平和の実現は難しいと思います。「力による平和」が精一杯で、神を侮るまでの自己愛に満ちた社会ではなおさらです。

わたしたちキリスト者の希求する恒久平和とは、悪魔のわざである罪と死に勝利したキリストの復活がもたらす永遠のいのちにあずかることであります。

鹿児島カトリック教区報2025年8月号から転載

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