司教の文書

2025年〈年頭教書〉「2025年聖年」を有意義に過ごしましょう

投稿日:2024年12月29日 更新日:

中野裕明鹿児島司教

鹿児島教区司教 中野裕明

教区の皆さま、新年明けましておめでとうございます。旧年中は皆さまのお祈りとご協力によって、教区として、着実な歩みができたのではないかと思います。感謝いたします。本年もどうぞよろしくお願い申し上げます。

さて、年頭にあたり、聖年を有意義に過ごすために二つの事をお話しします。

「巡礼」を推奨します

一つ目は、「巡礼」の奨励です。

巡礼とは一般に、「日常的な空間を一時的に離れて宗教の聖地や聖域に参詣し、聖なるものに、より接近しようとする宗教行動」(ウキペディア「巡礼」参照)と言われています。

巡礼は、イスラム教徒によるメッカやメディナ巡礼や、仏教徒による四国のお遍路等が有名です。カトリックではローマ、イスラエル、サンチャゴの3大巡礼地がありますが、その他にもルルドやファチマなどマリアさまのご出現の聖地があります。そのような聖地に日常的な空間を一時的に離れることによって確かに霊的なものを再発見できます。

ところで、聖年の大勅書は、そのような遠くに行かなくても聖年の恵みが得られるように、自分の教区に巡礼指定教会を設けるよう指示しています。

鹿児島教区では①鹿児島カテドラル・ザビエル教会、②名瀬聖心教会、③徳之島母間教会の3か所を巡礼教会に指定しました。

さらに、鹿児島教区行事として認定されている①キリスト教伝来記念ミサ、②川内殉教祭ミサ、③シドッチ祭ミサに与かるなら、聖年のお恵みが頂けるようになります。

上記の巡礼は個人で行うことも可能ですが、教会共同体として参加することを奨励します。各小教区は「いつ」「どこに」巡礼するかを検討し、できるだけ多くの人が参加できるように働きかけてください。それによって地上を旅する神の民の性格を体験でき、信仰共同体として成長できる良い機会になります。

聖年についての神の意図を知ること

二つ目は、聖年についての神の意図を知ることです。それは、レビ記25章「安息年とヨベルの年」を精読することによって分かります。

レビ記は、神から授けられたモーゼの律法の内容を具体的に実践する祭司族がまとめた、いわば「規律の書」です。言い換えれば、イスラエルの民がその社会生活の中でどのようにしたら神の意思を反映させることができるかが示されています。

具体的にお話しします。神の十戒の第3戒に「安息日を聖とせよ」とありますが、その説明として、天地創造の神は6日間働いて、7日目に休まれたから、人間はこの7日目を安息日と定めて、仕事を休むように定めています。

そして、この1日を年に置き換えると、6年間は働き、7年目は休むように、という規定です。ただ、この7年目の安息年は、人間の労働は禁止されるので当然、耕作していた田畑も休ませることになります。つまり休作です。これを7回繰り返すと、49年になります。そして、次の50年目が「ヨベルの年」と呼ばれ、また休みの年になります。

このヨベルの年には、2年続けて、労働は「なし」ですが、これまで蓄えてきたものと神が自然を通して恵まれるもので暮らします。

また、「この49年間のうちに生活の困窮のため、売却した人や土地や財産などが自分に戻ってくる」という特権を得られます。さらに興味深いことは、これらの社会生活上の決め事などは、同胞や滞在者や寄留者、さらに異邦人間での取り決めだということです。これら異なった種族の人々の関係が、争いもなく整理され、初期の正常な状態に戻る様子がうかがえます。

わたしたちは現在、自由と民主主義が人類を幸せにする最高の価値観として教えられ、その実りを享受していますが、この地上では、相変わらず戦争が勃発し貧困にあえぐ人々が存在します。

戦争と移民問題は、21世紀の最大の課題です。天地創造の神を信じて受け入れているわたしたちは、神の意思の表れである神の十戒にもう一度立ち返り、民主主義を叫ぶ前に、神の意思を求め、それに従って生きる術を社会生活の中で実践していきたいものです。

鹿児島カトリック教区報2025年1月号から転載

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