司教執務室だより

マリアさまの白ユリ

投稿日:2015年4月30日 更新日:

yuri五月と言えば聖母月。聖母月で思い浮かんだのは「五月のきさきをあめつち歌う、ひととせ巡りてユリ咲く季節…」というあの聖歌。口ずさんでいると懐かしさと共にほろ苦い思い出もよみがえった。

小さな峠を越えたところには侍者仲間の同級生が3人もいたので、放課後、よく遊びに行ったものだ。そのうちの一人は叔父さんの家と隣合わせで、裏には段々畑があり、サトウキビやイモが植えてあった。奄美では、自生の白ユリをどこでも目にすることができるのだが、友人の叔父さんの芋畑も例外ではなく、季節になると芋づるの間から白ユリが咲きだすのだった。

誰に頼まれたのか記憶にないが、ある時友人と連れ立ってユリの花をとりに出かけた。一抱えもとって帰ろうとした時だった。

「こらっ、そのユリどうするんだ!」顔を上げると怖い顔の叔父さんが庭先からにらんでいた。「教会に…」どぎまぎしながら答えた。信者の叔父さんだけに、教会という言葉に反応された。

「あー教会。日曜日ワシが持っていこうと思っていたのだが…。」

振り上げたこぶしの始末に困っておられたようだったが、せっかくマリア様に喜んでもらおうと思ったのに、横取りされたようで悔しかったのかもしれない。子ども心にも申し訳ない気持ちになってスゴスゴと芋畑を後にした。

あれから60年。すでに住む人もなく、芋畑も樹木に覆われているに違いない。

ところで、聖書の植物の庭ではアーモンドの実が大きさを増し、オリーブの花も満開。幹だけだったブドウもツルが伸び、葉も青さを増している。そして、マリア様を覆うように咲いていた黄色の可愛いモッコウバラに代わって白ユリが出番を待っている。

ここを訪れる人々が聖母の執り成しで信仰の花を咲かせるといいのだが。

お勧めの記事

2025年聖年ロゴマーク 1

教皇フランシスコは、今年の主の昇天の祭日に2025年の「聖年」公布の大勅書『希望は欺かない』を発表しました。それで今回は「聖年」についてお話しします。聖年とは1300年に教皇ボニファチウス8世によって始められたカトリック教会の一大イベントです。

中野裕明司教の紋章 2

利害関係で構築されている政治の世界であっても、少なくとも神の国の価値観、すなわち「真理と生命」を大事にする政治家が増えることを願ってやみません。

中野裕明司教の紋章 3

鹿児島教区司教 中野裕明 「対話を通しての宣教」について 教区の皆さま、お元気でしょうか。 今回は「世界宣教の日」(10月20日)に因み、「対話を通しての宣教」についてお話しします。 さて、カトリック ...

中野裕明司教の紋章 4

鹿児島教区司教 中野裕明 「被造物を大切にする世界祈願日 すべてのいのちを守るための月間」について 教区の皆さま、お元気ですか。今回は日本の司教団が制定している「被造物を大切にする世界祈願日 すべての ...

中野裕明司教の紋章 5

8月15日は「太平洋戦争終結の日」であり、「聖フランシスコ・ザビエルによる日本へのキリスト教伝来」の日であり、「聖母被昇天の祭日」でもあります。これらの出来事において、「天の父の御心」が実現した日であることを感謝し、世界の紛争地に1日も早く平和が実現するように祈りましょう。

-司教執務室だより
-

Copyright© カトリック鹿児島司教区 , 2024 All Rights Reserved Powered by STINGER.