門田明氏の鹿児島とキリスト教

アンジローか?ヤジローか?

投稿日:2006年7月1日 更新日:

門田明氏の鹿児島とキリスト教③

先月号では、ザビエルを日本に案内したヤジローについて語り、彼を取り上げた2冊の本、岸野久『ザビエルの同伴者アンジロー』(吉川弘文館)と新村洋『天文十八年』(高城書房)を紹介した。ところで、この2冊の書物で、同一人物を、前者はアンジローと呼び、後者はヤジローと呼んでいる。何故こんなことが起こるのか、奇妙に思う人もあるだろう。一応私なりの説明をしておきたい。

先ずザビエルは彼の名を「angero」と表記している。他に「anjiro」「anjiroo」と表記した宣教師もあり、アンジロー、またはアンジロウと書かれるようになった。しかし、アンジローは、いかにも耳慣れない日本名である。歴史の本や小説などでも見たことがない。そもそも「アン」という言葉は、「暗」と同音であり、暗愚、暗黒など連想させ、子どもに名付けるとき、このような不吉な印象を与える語をわざわざ用いる親はいないだろう。一方ヤジローは弥次郎と漢字を当て、弥一郎、弥三郎などと並んで、広く普通に使われている名前である。

では、何故ヤジローがアンジローになるのだろう。実はここで少し音声学的な分析が必要だと思う。hatsuon

人聞は、子供の頃から毎日使っている母国語の音声にない音を、正確に聞き分けたり再現したりするのが、非常に難しいことがある。ザビエルは、山口(ヤマグチ)を「アマングチ」と読んでいる。「アマングチ」の「ア」を「ヤ」に変え「ン」を取り除けば正確な「ヤマグチ」の音になる。同じことを「アンジロー」に当てはめ「ア」を「ヤ」に変え、「ン」を取り除くと「ヤジロー」になる。「グ」の前の「ン」と「ジ」の前の「ン」では若干違いがあるが、いずれも排除できるようである。

ザビエル時代の日本語通詞ロドリゲス・ツヅも「yajiro」が正しいと明言しており、私自身、パウロ・サンタ・フェの日本名としてはヤジローを使うのがよいと思っている。(玉里教会信徒・ザビエル上陸顕彰会会長)

鹿児島カトリック教区報2006年7月号から転載

お勧めの記事

中野裕明司教の紋章 1

全世界の教会のために開かれる司教シノドスが実り豊かなものとなるよう、教会の母聖マリアの取り次ぎを神の民に願うことは誠に相応しいことであると思います。

中野裕明司教の紋章 2

鹿児島教区司教 中野裕明 教区の皆さま、主イエスのご復活おめでとうございます。復活の慶びが教区全体に行き渡りますように。 今回は復活節に因んで、イエスの復活についてお話しいたします。 私は、ある信者さ ...

中野裕明司教の紋章 3

世界には大小さまざまな真偽不明の情報が攪乱しています。そんな中、普遍な価値を選択し、神の国の実現のために私たちの信仰を今一度見直していきたいものです。

中野裕明司教の紋章 4

この世は闇に覆われているので、明るいニュースに乏しいのが現実です。そんな中、罪と死に打ち勝ち、復活したキリストを賛美し顕彰する教会の使命は、まさに福音宣教の一点にあると言えるのではないでしょうか。

中野裕明司教の紋章 5

聖家族とは、神が人間となって私たちの一人になってくださり、私たち家族の苦労を共有してくださった最初の家族のことです。その家族とは、ヨゼフとマリアと幼子イエスのことです。

-門田明氏の鹿児島とキリスト教
-,

Copyright© カトリック鹿児島司教区 , 2023 All Rights Reserved Powered by STINGER.